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東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)205号 判決

事実及び理由

原告主張の取消事由の存否について判断する。

成立に争いのない甲第二号証の一ないし五、甲第七号証及び証人岡田政義の証言を総合すると次の事実が認められ、これに反する証拠はない。

1  岡田産業有限会社は、本件実用新案登録出願前である昭和四五年六月四日ころ、広島トヨタフオークリフト株式会社から小松フオークリフト株式会社製フオークリフトFG一四型を改造して製作された「盤木運搬用フオークリフト」を購入し、以降、これを三菱重工業株式会社広島造船所において、下請関連会社などの多数の従業員などが稼働しているなかで盤木その他船舶修理器材などの運搬などのために使用していたこと

2  甲第二号証の五の写真一二葉は、三菱重工業株式会社が、昭和五〇年一月三〇日に登録異議申立をなすに先立つて、同社社員が前記岡田産業有限会社の責任者岡田政義の立会いのもとに前記広島造船所構内において、前記「盤木運搬用フオークリフト」を撮影したものであること

3  運転席及びマストなどを改造して製作された前記「盤木運搬用フオークリフト」は、車体の前方に比較的短寸(一・二m)のマストを設け、運転席を車体の左外側位置に設けるとともに、運転座席を従来通常みられるものより低くし、ほぼ人間の太ももよりやや低い位置となし、それに伴つて、ハンドル、操作レバー類をも車体の低い位置に配設した低車高のフオークリフト(引用考案)であること 右認定事実に徴すると、引用考案は本件実用新案登録出願前に日本国内において公然実施されていたことは明らかである。

したがつて、審決の事実の認定は正当であつて、原告主張のごとき証拠価値についての判断の誤りはない。

そうすると、引用考案と補正後の考案とを対比したうえ補正後の考案は、実用新案法第三条第二項の規定により出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものではないから、原審で行なつた補正の却下の決定は妥当であるとし、さらに、補正前の考案と引用考案との間には実質上差異がみられず、両者は同一の考案と認められるとして本件考案は実用新案法第三条第一項第二号に該当し、実用新案登録を受けることができないとした審決の判断は正当である。

よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却する。

〔編註〕本件における請求原因は左のとおりである。

1  特許庁における手続の経緯

原告らは、昭和四五年一二月七日、名称を「低車高フオークリフト」とする考案につき実用新案登録出願(実願昭四五―一二二四一六号)をし、昭和四九年一一月三〇日、出願公告(実用新案出願公告昭四九―四三七九九号)されたところ、三菱重工業株式会社(被告補助参加人)から登録異議の申立があり、これに対し、原告らは、昭和五〇年七月一五日付手続補正書をもつて、後記「補正後の考案の要旨」記載のとおり実用新案登録請求の範囲を訂正するとともにこれに関連する「考案の詳細な説明」の記載を訂正した。

しかしながら、昭和五三年四月二二日、登録異議の申立は理由があるものとする決定がなされ、右同日昭和五〇年七月一五日付手続補正書による手続補正を却下する決定とともに、拒絶査定をうけた。

そこで、原告らは、昭和五三年七月一九日、右拒絶査定を不服として審判を請求し、昭和五三年審判第一〇九六五号事件として審理されたが、昭和五四年一〇月八日、「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決がなされ、その謄本は昭和五四年一一月五日原告らに送達された。

2  補正前の考案の要旨

「車体1の前方に比較的短寸のマスト4を設けるとともに当該車体1の外側低位置に運転席9を設け、かつ前記運転席9内およびその近傍に設置すべき操舵輪11操作レバー12類をも車体1の低位置に配設したことを特徴とする低車高フオークリフト。」

3  補正後の考案の要旨(昭和五〇年七月一五日付手続補正書により補正された実用新案登録請求の範囲)

「車体1の前方に比較的短寸のマスト4を設け、運転席9を当該車体1の外側低位置に設けるとともに、運転座席10を、車体外側最低部に位置せしめ、かつ前記運転席9内およびその近傍に設置すべき操舵輪11操作レバー12類をも車体1の低位置に配設したことを特徴とする低車高フオークリフト。」

4  審決の理由の要旨

(一)  本願は、昭和四五年一二月七日の出願であつて、原審において昭和四九年一一月三〇日に出願公告されたが、三菱重工業株式会社から登録異議の申立がなされ、これに対し昭和五〇年七月一五日付で手続補正書が提出されたが、この手続補正は却下の決定がなされ、登録異議の申立は理由があるものと決定され、昭和五三年四月二二日に拒絶査定されたものである。

(二)  そこで、まず、原審で行なつた補正の却下の決定の当否について審理する。前記補正を却下された手続補正書に記載された実用新案登録請求の範囲は、前項(3補正後の考案の要旨)のとおりである。

これに対して、原審の補正の却下の決定に引用された申立人(被告補助参加人)の提出した証明書(本訴甲第二号証の二)添付の写真(本訴甲第二号証の五)に示されるものは、証人岡田政義の証言を勘案し次のようなものと認める。

「車体の前方に比較的短寸のマストを設け、運転席を車体の外側位置に設けるとともに、運転座席を通常のものよりも低い人間の太ももよりやや低い位置となし、それに伴いハンドル、操作レバー等を低い位置に配設したフオークリフト。」(以下、これを「引用考案」という。)

補正後の考案と引用考案とを対比すると、両者は、「車体の前方に比較的短寸のマストを設け、運転席を車体の外側位置に設けるとともに、運転座席を低くし、かつ操舵輪、操作レバー等も低位置に配設したフオークリフト。」である点で一致し、補正後の考案が「運転座席を車体外側最低部に位置せしめている」のに対し、引用考案は「運転座席を車体外側で通常のものよりも低い人間の太ももよりやや低い位置に設けている」点で両者は一応相違しているものと認める。

しかしながら、引用考案も運転座席を通常のものよりも低い位置に設けており、補正後の考案の運転座席を車体外側最低部に位置せしめた程度のことは当業者がきわめて容易になし得たことと認める。そして、引用考案が本出願前三菱重工業株式会社広島造船所において公然使用されていたことは、証人岡田政義の証言により認めることができる。よつて、補正後の考案は、実用新案法第三条第二項の規定により、出願の際独立して実用新案登録を受けることができない。

したがつて、上記手続補正書は、実用新案法第一三条の規定により準用する特許法第六四条第二項の規定により更に準用する同法第一二六条第三項の規定に違反するので、実用新案法第一三条の規定により準用する特許法第五四条第一項の規定により却下されるべきものであり、原審で行なつた補正の却下の決定は妥当である。

よつて、本件考案の要旨は、出願公告された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された前項記載の補正前の考案の要旨のとおりのものと認める。

本件考案と前記引用考案とを対比すると、両者には実質上差異はなく、両者は同一考案に帰するものと認める。

そして、引用考案が本出願前国内において公然実施されていたことは前述のとおりであり、本件考案は、実用新案法第三条第一項第二号に該当し、実用新案登録を受けることができない。

なお、昭和五四年三月三一日付差出の手続補正書によりなされた補正は、実用新案法第一三条の規定により準用する特許法第六四条第一項の規定する期間経過後になされたものであつて、この補正は、実用新案法第四一条の規定により準用する特許法第一五九条第一項の規定により更に準用する同法第五四条第一項の規定により却下する。

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